テルラド式ファインダー内蔵輪ゴム銃

dungeon-master2009-03-02


等倍光像ファインダーを採用した単発ゴム銃です。
ここまでしなくても…という声が聞こえてきそうです。
たかが輪ゴム銃、されど輪ゴム銃。作ってみたいから作るシリーズとでも言っておきましょう。
銃の名前は、尻尾が白く獲物を追いかける目を持っていることから「トレイルフォックス」としました。


先日、磁力復帰型の単発銃にレーザーポインタを仕込んでみましたが、命中精度はなかなか良いのに、競技と同じようにセッティングされたステージでは意外に使いずらいことが分かりました。レーザー光がターゲットにマークされいてるときは腰だめでも撃てるのに、マークが外れた場合はポインタ自体を見失いがちなのです。
黒っぽいバックだとレーザー光が吸収されますし、レーザーがテーブル面に当たって拡散しても射手側への反射が少なく、周りが明るいと射手の方からはよく見えません。
そもそもレーザーをつけたのは、アイアンサイトでは目の焦点距離合わせがキツイからですが、肝心のポインタを見失ってはどうにもなりません。


ダットサイトのような光像式のファインダーであれば、よっぽど眩しい状況でなければターゲット周りの状況に左右されることはありません。既に数年前にダットサイト標準装備のゴム銃が世に出ており競技会でも好成績を記録しているようで、こうなると、がぜん光像式ファインダーを導入したくなります
しかし、トイガン用の市販ダットサイトはハーフミラーのコーティングが濃い色なのでターゲットが見難い感じもしますし、なかなか値が張るようです。
もっとも、買ってくっつけるのは信条(そんなんあったのか?)に反しますので自作が基本となりますが、ダットサイト用ハーフミラーは、凹面鏡とハーフミラーの二役を1枚でこなすので、作るのは厳しそうです。


というわけで、いろいろ検討した結果、ファインダーの機構としてはテルラド式を採用することにしました。
テルラドはコンパクトにはなりませんが、作るのは輪ゴム銃ですから、銃のボディーをそのままテルラド機構にしてしまいます。
すなわち、輪ゴム発射機能がついたスポットファインダーと言ってしまっても良いかもしれません。


今回活躍した材料は、顕微鏡観察のプレパラートに使うスライドガラス。
ハンズで水ガラス切放タイプ10枚入りで210円と入手も容易。
レチクル板、ハーフミラー、斜鏡の材料として使いました。
スライドガラスの幅がそのままファインダーの幅になります。約26mmはファインダーとしてはちょっと狭いかもしれません。
薄いガラスは砕けやすくて、きれいに切りにくいです。厚さにマッチしたガラス切りが必要です。


ファインダー部
ハーフミラー、レンズ、斜鏡で構成されています。

LEDによってライトアップされたレチクルの光が斜鏡とハーフミラーで反射して、ターゲットからの光と重なって目に到達。凸レンズによってレチクルの虚像を結像します。その結像点をターゲットまでと同距離付近になるよう調整すると視点を少しずらしても、ターゲットにレチクルが追従します。
天文用テルラドはほぼ無限遠の結像ですが、ゴム銃競技はターゲットが至近距離でしかも競技により変動しますので、虚像の結像点の調整範囲は大きくしておく必要があります。


斜鏡はスライドガラスをカットして片面を黒く塗りつぶしたものです。2種類の油性マジックで重ね塗り。
はじめは100円ショップで売られているコスメグッズの薄い鏡を使おうと思ったのですが、実験してみると、銀面とガラス表面の二重反射やガラス内部で繰返し起こる反射が酷く、レチクルのゴーストが何重にも見えてしまうことが分かりました。
表面反射鏡を使えば解決するのですが、高価なのでどうしようかと思案していたところ、小学生の頃に万華鏡を作ったときの事を思い出し、ガラスの裏面を黒く塗りつぶして表面反射鏡の代わりにすることにしました。
黒い側での反射が非常に少なくなるので、ゴーストを軽減できます。
反射率は表面反射鏡と比べるまでもありませんがLEDの明るさでカバーします。


レンズは、100円ショップの老眼鏡から取りました。
通常、レンズの像は、焦点距離の長い方が拡大率が小さくなり、虚像の拡大にともなうレチクルの暈け具合や斜めから見たときの収差も小さくなります。
しかし、あまり焦点距離が長すぎると本体に収まらなくなるので、ちょうど良いものを探さないといけません。
そこで目をつけたのがプラスチックレンズの老眼鏡です、D値3.5+という度数のものが焦点距離約28cm。(4+が25cmですが、行った店の4+はガラスばかりだった)
老眼鏡のフレームから取り外したレンズを、電動丸鋸で長方形に切り出します。
上下と左右の切り口をみたときにレンズの厚みがほぼ同じになるラインで切るのが吉ですが、結構位置決めが難しいです。


ハーフミラーはスライドガラスを切って土台に45度の角度で取り付けたもの。土台はファインダー部にネジ止めします。
フレームレスにしますので、安全のためガラスの周囲はヤスリを当て角をとっておきます。


レチクル発光モジュール。

銃本体に電気配線を伸ばさないようにするため、発光回路、スイッチ、電池ボックス、レチクル板を、35mm×25mm×14mmの直方体に収めました。
LEDは東芝製超高輝度タイプ、色は赤。Vf=2.4Vです。
回路は全ての部品が直列に接続されるシンプルな1ループ構成。
使用する電源は3V(LR44×2)とし、電流制限用の抵抗は100Ω1/16Wを使用しました。0.6V/100Ω=0.006Aで超高輝度タイプには十分な電流です。ガラスエポキシのユニバーサル基板に、LED、抵抗、電池接点を配置し、ワイヤーでスイッチを組んで配線。ハンダ付け。
レチクル板は幅1cm、長さ2cm程度に切ったスライドガラス。光を拡散させるためにLED側をすりガラス状にしてあります。使ったLEDは狭い範囲に光を集中させるタイプで、点灯させるとレチクル版すりガラス面に直径5mm程度のスポット光を作ります。
アルミシートを張り合わせてスポット光をマスクし、レチクルの形状を作りました。とりあえず×形。


レチクル発光モジュールをボディに装着して点灯した状態でスコープを覗いてみると、バレル延長上に赤いレチクルが見えます。

カメラのフォーカスがレチクルに合っていますので、見かけ上手前にくる銃本体はピンボケです。


バレル下側。レチクルが眩しく光っています。
周りから光が漏れていますが、斜鏡とハーフミラーの反射率が低いため、レチクル以外が気になることはほとんどありません。


ゼロイン作業をきちんと行い、ターゲットを狙った状態で銃を固定。
いろいろ視点をずらしてファインダーの特徴を確認してみます。

左上:ターゲットは1.2mの距離に置いたフリスクのケース。
右上:視点を斜め上にずらしてもレチクルの見掛けの位置はターゲットからずれません。
下:スコープの左右ギリギリまで寄ってもずれません。ターゲットを照らしているわけではないので当然レチクルは欠けます。


発射機構
輪ゴム発射機能は単発です。ネオジム磁石1個による磁力復帰型のピンホールド引込方式。
復帰に使用したのは、100円ショップで売られている掲示板用マグネットから取り出した厚さ3mm直径5mmのネオジム磁石1つです。

ファインダー部を外したところ。ホールドフックにゼムクリップを使用して、磁力で定位置まで引き戻します。磁石はホールドフックのパーツの上にある出っ張りに埋め込んでいます。
バレル直下に光路を設けているため、瞬間解放式のように大きく回転するパーツはおさまりませんでした。
光路を避ける形状のリンク機構を組んでいます。リンク機構でトリガとホールドが連動するので、スプリング等はありません。


集弾性能。1.6mから手持ちで5発。もちろん照準はファインダー使用。

そこそこピンポイントに近いですが、着弾時に広がっている輪ゴムもあり、輪ゴムの装填具合がかなり影響します。
ファインダーの精度が良くても肝心の弾道がぶれるようでは意味がありませんので、発射方式の見直しが必要かもしれません。


「トレイルフォックス」
磁力復帰型ピン引込方式単発輪ゴム銃(テルラド式ファインダー装備)
全長329mm、銃身長240mm、適合弾:共和オーバンド カラーバンド#16
電源:LR44×2


材料:アガチス、杉、桧、松、朴、白樺小判割箸、MDF、紙
   プレパラート用スライドガラス、
   プラスチック凸レンズ(100円老眼鏡D値3.5+)
   高輝度赤色LED、100Ω1/16W、燐青銅板、ユニバーサル基板(ガラスエポキシ)、
   ゼムクリップNo.00、ネオジム磁石